9.13.2017

あなただけの



土曜日の夕方、神保町へひとり出向き、
映画"静かなる情熱 エミリ・ディキンスン"を鑑賞。
映画を観る時間、本を読むひとときは、いつも流れている時間よりも
少しだけその時が膨らんでいるような気がします。 

さらに詩人エミリ・ディキンスンの、内に秘めた言葉が
抱えきれずこぼれ落ちたかのような朗読に、耳を澄ませるおよそ2時間は
静謐で心潤うものでした。 

帰宅してから、少し前に入手した"Emily Dickinson; Envelope Poems"のページを
改めてめくり、走らせたであろう鉛筆の音を想像したり。 

ちょうど映画が始まる前に、喫茶店で読み終えたジュール・ヴェルヌの小説"緑の光線"の
クライマックスの場面の日付が、まさに私がページを開いた日付と一致していたことも
読書の楽しみをささやかに噛み締めた瞬間でした。 

もともとエリック・ロメールの映画"緑の光線"の中で、ヴェルヌの"緑の光線"が
話題となっていたことから読み始めた1冊。
映画の中でも、緑の光線にたどり着くまでに、道端に落ちていた緑のカード、
その日に着ていた緑の服...とまるで道しるべかのように現れる緑色のものに
気を留める主人公に、私も心をなぞらえていたので、 そういった本と映画を
行き来する時に出会う些細な偶然が、余計に嬉しく感じられました。 

徐々にTVやDVDなどの映像の魅力に取り憑かれつつある2歳の娘ですが 、
変わらず絵本を読むことにも熱を注いでおり、
最近見つけて読んだ ベアトリス・S・ド・レーニエ"あなただけの ちいさないえ"が
私自身がそうそうそう!と思わず相槌を打ちたくなるような
詩的な言葉がたくさんで、心に響きました。

家族や友達に囲まれていても、時々ひとりになりたいと思う時がある。
そんな時にはあなたがあなただけのいえを持っていれば、
どんなに良いでしょう。そしてそのいえはテーブルの下、
木の上、お面をかぶったり、毛布に隠れているときに現れるのですよ。と
やさしく語りかけるのです。

今も目には見えない赤ちゃんをお風呂に入れたり、
突然ひとりで誰かと電話する話し声や、お買い物をするやりとりを
聞かせてくれる娘ですが、その延長でこの先も
自分だけのいえを持つことで、心を強くして居られると良いな、と
見守っています。

今朝の朝食時、バターケースを眺めながら
「バターがおうちでねんねしてるね。」という娘の言葉も、
そのまま冷蔵庫にとっておきたい気持ちになりつつ、
私も時々自分だけのいえに心を置くことで、また新鮮な気持ちで
日常に向き合える気がしています。


** 写真は絵本"あなただけの ちいさないえ"の扉に
 娘によって大胆に描かれていた、泣いているお顔。