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9.05.2019

秋の訪れに


夏生まれなので暑い夏も心躍るのですが、秋の気配が近づいて、すっと全てが落ち着いていく感覚も大好きです。

娘の夏休み中はひとり課題図書として「よくできた女」読了。これは好みがはっきりと分かれそうですが、ひとり暮らしの30代女性が戦後イギリスで慎ましやかに暮らす中、よくよく人間観察をして胸の内ですっかり思いの丈を吐露する様は、飾らない本物の人生を垣間見るようでした。そういえば娘の絵本の好みも、なんとなく人生が感じられるような、暮らしがそこにしっかりと根付いている物語を、繰り返し読んでいる気がします。

夏の終わりに岩波ホールで映画「聖なる泉の少女」をひとり鑑賞した際にも、清涼な風が心に吹き込みました。ジョージアの山村に滑らかな水を讃える泉と、そこに仕える少女の心の機微を捉えた物語。言葉少なに進められる情景描写に、いつしかわずかな衣ずれの音にも耳を澄ましており、館外に出た時の町の喧騒には少し怯んでしまうほどでした。

とはいえ場所は神保町。久しぶりに訪れたのでいつまでも滞在できそうでしたが、そうもいかず、足早に見たいところを、かいつまんで巡りながら、音楽や舞台芸術にまつわる書籍が多く扱われている書店にてバレエの練習曲の楽譜を見つけました。バレエは華々しい舞台にも、もちろんうっとりしますが、コツコツと練習を重ねる際のピアノ曲は聴いていて飽きることがありません。少しは自分で弾けるように、というのがこの秋のひとつの試みです。

9.13.2017

あなただけの



土曜日の夕方、神保町へひとり出向き、
映画"静かなる情熱 エミリ・ディキンスン"を鑑賞。
映画を観る時間、本を読むひとときは、いつも流れている時間よりも
少しだけその時が膨らんでいるような気がします。 

さらに詩人エミリ・ディキンスンの、内に秘めた言葉が
抱えきれずこぼれ落ちたかのような朗読に、耳を澄ませるおよそ2時間は
静謐で心潤うものでした。 

帰宅してから、少し前に入手した"Emily Dickinson; Envelope Poems"のページを
改めてめくり、走らせたであろう鉛筆の音を想像したり。 

ちょうど映画が始まる前に、喫茶店で読み終えたジュール・ヴェルヌの小説"緑の光線"の
クライマックスの場面の日付が、まさに私がページを開いた日付と一致していたことも
読書の楽しみをささやかに噛み締めた瞬間でした。 

もともとエリック・ロメールの映画"緑の光線"の中で、ヴェルヌの"緑の光線"が
話題となっていたことから読み始めた1冊。
映画の中でも、緑の光線にたどり着くまでに、道端に落ちていた緑のカード、
その日に着ていた緑の服...とまるで道しるべかのように現れる緑色のものに
気を留める主人公に、私も心をなぞらえていたので、 そういった本と映画を
行き来する時に出会う些細な偶然が、余計に嬉しく感じられました。 

徐々にTVやDVDなどの映像の魅力に取り憑かれつつある2歳の娘ですが 、
変わらず絵本を読むことにも熱を注いでおり、
最近見つけて読んだ ベアトリス・S・ド・レーニエ"あなただけの ちいさないえ"が
私自身がそうそうそう!と思わず相槌を打ちたくなるような
詩的な言葉がたくさんで、心に響きました。

家族や友達に囲まれていても、時々ひとりになりたいと思う時がある。
そんな時にはあなたがあなただけのいえを持っていれば、
どんなに良いでしょう。そしてそのいえはテーブルの下、
木の上、お面をかぶったり、毛布に隠れているときに現れるのですよ。と
やさしく語りかけるのです。

今も目には見えない赤ちゃんをお風呂に入れたり、
突然ひとりで誰かと電話する話し声や、お買い物をするやりとりを
聞かせてくれる娘ですが、その延長でこの先も
自分だけのいえを持つことで、心を強くして居られると良いな、と
見守っています。

今朝の朝食時、バターケースを眺めながら
「バターがおうちでねんねしてるね。」という娘の言葉も、
そのまま冷蔵庫にとっておきたい気持ちになりつつ、
私も時々自分だけのいえに心を置くことで、また新鮮な気持ちで
日常に向き合える気がしています。


** 写真は絵本"あなただけの ちいさないえ"の扉に
 娘によって大胆に描かれていた、泣いているお顔。